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B&W トールボーイ 803D の特徴

■伝説のトールボーイ・B&W『803D』

 

 

1990年代に始まった“AV化”の流れは、スピーカーの“トールボーイ化”の流れでもありました。

もともと、日本と同様「住宅事情があまりよろしくない(狭い)」イギリスでは、オーディオスピーカーのトールボーイ化は、そのはるか以前から取り組まれており、B&Wもまた例外ではありません。むしろ、B&Wにとっては最も「得意分野」だったとも言えるでしょう。

もっともモニタースピーカーで名を馳せたB&Wの場合、住宅事情というよりも、スペースの限られるレコーディングスタジオを考慮してのことかも知れませんが。

 

 

 

B&Wのトールボーイの代表格とも言える803Dは、2005年の登場。ホームシアターの潮流の中、オーディオ各社のトールボーイがひしめく中でも、その18cmウーファー×3、+15cmケブラーコーンスコーカーの4連スピーカーの外観は、他を圧倒する存在感でした。

 

 

 

さて。スピーカーをトールボーイ化すると、当然ながらキャビネットの幅に応じて、ウーファースピーカーの口径は小さくなります。

これをオーディオ的に補う方法は何通りかありますが、B&Wの場合は最もストレートな手段「スピーカーを増やす」手法を用いたわけです。これは803Dに始まったわけでもなく、80年代の800シリーズの時にすでに用いられており、むしろB&Wの伝統的手法とも言っても過言ではないでしょう。

 

803Dの上位に当たる800Dのウーファーは25cm×2。最上位の801Dでは38cm×1で、低域の再生能力は23Hz〜。803Dは35Hz〜ですから、善し悪しはともかくスピーカーの数だけでは、数値上では、さすがに補い切れないことが分かります。「善し悪しはともかく」と申し上げたのは、可聴範囲を超えた音が必ずしもオーディオ上、心地よいかどうかは話がまったく別だからです。

 

並べて聞き比べでもしない限り、803Dの低音域に不足を持たれる方は、ほぼ皆無でしょう。また38cmほどのウーファーともなれば、駆動するには相当な力量のパワーアンプが必要になることも確かです。

 

 

 

逆に、B&Wは16cm級ウーファーで非常に優秀なスピーカーユニットを持っていますが、16cm×4連を作らなかったことにもまた理由あってのことでしょう。

スピーカーの数が増えると、どうしても共振によって低位がボヤけます。

定位において評価の高いB&Wが、18cmの3連まで作れたのは、同社の『マトリックス構造』によるところが大きいものと思われます。

つまり803Dは、B&Wでなければ作りえなかったトールボーイとも言えるでしょう。

 

 

 

高域については、801、802、803Dともに共通して25mmのダイヤモンドドーム・トゥイーターが用いられています。

Dはダイヤモンドの『D』であり、803Dで注目されたのは、3連ウーファーよりも、むしろ人工ダイヤモンド振動板の創り出す高音域でした。

 

その高音域に負けないだけの低音のために、3連ウーファーが必要だったとも言えるかも知れません。

ダイヤモンドツィーターの衝撃については、多くを語らずともオーディファンなら多少なりとご存知でしょうから割愛しますが、803Dの『D』は、B&Wを支える技術として、後の同803diamondへと引き継がれて行きます。

 

 

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